主張
縦軸に目盛のない棒グラフや折れ線グラフを描くのはやめよう。
棒グラフ
以前の職場でよく見かけた棒グラフがこのようなものでした。
これは万能棒グラフです。
- 目盛のベースラインが 0 スタートでなくてもいい
- 目盛線は省略していい
という風に棒グラフを書いてしまうとどんなデータにもあてはまる、万能棒グラフができあがります。
どんなデータにもあてはまるとは、つまりデータの特徴をなにも表せていない統計グラフということです。
統計グラフとしての機能をはたしません。
折れ線グラフ
また、このような折れ線グラフもよく見かけました。
ここで、折れ線グラフは縦軸の幅を広くとれば大きな差を小さくみせ、狭くとれば小さな差を大きく見せることができることに注意してください。
縦軸に目盛がないと、この目盛操作に気づくのは困難です。
退職の理由
わたしは新卒で Web 広告、 Web 系ツールの代理店に務めていました。
その会社は広告に関しては、
Web 解析に関しては、
であり、各種ツールの販売や SEOのコンサルタントも行っておりました。
わたしはワールド・ワイド・ウェブもデータ分析も好きなので、そのような会社にはよくマッチするだろうと思い、新卒でその会社に入社しました。
その会社で「Web 解析コンサルタント」とか「アナリスト」という肩書で仕事をしていましたが、その職場で上司や諸先輩方が作った Web 解析のレポーティングフォーマットは、上記のようなグラフをエクセルで量産するものでした。
それはわたしにとって非常につらいことでした。
上司や諸先輩方の作ったフォーマットに批判的言及をすることはぼくのコミュニケーション能力ではむずかしく、一方で自分がそのフォーマットにしたがって統計グラフを作ることはぼくのプライドが許さないことでした。
ぼくは「プライドが高くて人様の意見を認めない」とよく言われました。
わたし自身はプライドが高いことが悪いとはまったくおもっておらず、また自分がまちがっていると思ったときはすぐに謝罪訂正をしていたつもりでした。
おそらく人間には 2 種類のプライドがあります。
フォーマットに則って着々と仕事をこなしておれば、おそらく入社一年目の社員としては優秀だ、とほめられたでしょう。
しかしわたしはおそらく自己実現の欲求が強い人間です。
短期的には人から認められなかったとしても、自分の中で納得ができることをしていたいのです。
社会的承認の欲求の優先順位が高い人にとっては、自分の作ったフォーマットを批判されることは「自分が否定された」と感じる体験でしょう。
わたしはそれを理解できていませんでした。
わたしの会社内での軋轢は「社会的承認の欲求」を優先する人と、「自己実現の欲求」を優先するわたしの価値観の違いから生まれた齟齬と考えられます。
統計データ分析が好きでそれを自己アピールして入社して、統計的な観点からみてただしいと思えることにプライドを持ち、主張することが悪いかのように言われてしまうと、そもそも自分がその会社にいる意義とはなにか? という根本的な懐疑が生まれます。
会社を辞める契機の一つとなったのは、一緒に仕事をしていた派遣社員の方が心身のバランスを崩し、なしくずし的に契約を切られたことです。
その方がやっていたのは、主にデータを引っ張ってきてフォーマットにある通りにエクセルシートを埋める作業でした。
自分自身がもっとちゃんと勉強して、データ取得からレポーティングまでを省力化していれば、その人は長時間残業することなく帰れていたはずでした。
自分が救えるはずの人を救えなかった。
もともとわたしはメンタルヘルス面に問題を抱えておりましたが、その方がいなくなったことにより仕事量が増えたことと、自分が救えるはずの人を救えなかったという罪悪感に引っ張られるようにしてさらに持病が悪化し、退職するに至りました。
いま自分が R + Googleアナリティクス関連の日記やA/Bテスト関連の日記、マーケティング理論や統計グラフに関する批判を書いているのは、懺悔であり、リベンジであり、贖罪です。
Google アナリティクス カテゴリーの記事一覧 - 廿TT
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3D円グラフとともに滅するべき棒グラフの省略表現 - 廿TT
自分の中で正しいと思っていることを主張したいのにできなかった、またそれを省力化することができなかったという後悔をモチベーションにこれらのエントリを書いています。
自分の中の理屈の整合性を無視することは、おそらくぼくには不可能です。
同調圧力に負けず、理屈として正しいか否かを考え、納得出来ないことは納得しない。
靴下に穴があいていたらそれを教えてあげるべきだし、それが親切だと思うし、人に親切にすることができない世界なんてまちがっている。
頭のなかに流れているのはロッキーのテーマであり、中島みゆきのファイトであり、ブルーハーツのチューインガムをかみながらです。
勝つか負けるかそれはわからない それでもとにかく闘いの出場通知を抱きしめて
疑問符背中に背負って 僕は毒づいてやるんだ
大人の顔してる人に 僕は毒づいてやるんだ
チューインガムをかみながら わがままな子供のようにセックスヘタでもいいだろう?
ルックス変でもいいだろう?
ヴィックスなめてりゃいいだろう?
ソックス穴があいてるよ
ちょっとコメントで批判されたくらいで「うわあ炎上だwww スルーしますwww」とかぬかすデータサイエンティスト、アナリスト、コンサルタント各位、お前らとはちげーんだよ。わからしてやる。
死ぬことは怖くない いつでも死ねる
俺が恐れるのは 俺が俺でなくなること
それだけはご免だ そこだけは譲れない
わかるか…? 俺は…
たとえ勝つにしろ 負けるにしろ
赤木しげるとして勝ち 負けたいのだ…
- 作者:福本伸行
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フレッシャーズに伝えるメッセージ
新入社員マナー研修などでメラビアンの法則の3D円グラフを見せられたらすぐその場で手を上げて質問しましょう。
「尺度とグラフの面積が一致していません」
「言葉がコミュニケーションの7%ってつまりなにをどう測った数字なんですか?」
そして「わかりやすくするためにあえてこういう表現を選んでます。ビジネスの現場ではそういうことも必要です」などという答えがかえってきたら、
「マナーでは見た目も大事っていう主張と、意図的に統計グラフの見た目を操作する行為のマナー違反は矛盾しませんか?」
「言葉が7%なのになぜ言葉で説明しているのですか?」
とさらに反問しましょう。
会社なんて去年の書類のコピーで動いている。去年の書類はおととしの書類のコピーでできている。最初に書類作ったやつは別に法律も会計も自然科学も社会化学も人文科学も詳しくない。あなたたちは大学で勉強した学問の力で書類を直して行かなければならない。
リクルートに高いお金をかけて優秀な学生を採用して、研修ではまた外部のコンサルタントに高いお金を払って「ビジネスの現場では学生感覚なんて通用しない」なんて言って萎縮させ、ロジカルシンキングでMECEとかいって高校数学レベルの集合と論理をあいまいにしたようなことを教え込むのはお金の使いかたが下手すぎる。
それをちゃんと教えてあげようよ。
これはアナリストとかコンサルタントとかいうご大層な肩書の人間だけではない。人事でも経理でも一緒だ。
「数学的には正しいけど、ビジネスの現場では……」なんてのにかんたんに納得しちゃだめだ。
それを言ったら、
「法学的には正しいけど、ビジネスの現場では労働基準法なんて守ってられない」
「会計学的には正しいけど、ビジネスの現場では正しく帳簿なんてつけてられない」
って主張もまかり通るのか?
あ、通ってるね……。
追記
尊い、尊い http://t.co/8znlckAf76
— トデス子 (@todesking) 2015, 1月 3
トデスキングさんのせいで、もといおかげで少しバズってしまいましたよ… こういうのがあれすると親切なおじさんがあらわれるので… 人生相談は医者と家族と友達にするので大丈夫です。
あと、「縦軸に目盛のない棒グラフや折れ線グラフ」あからさまにバカにしてる人いるけど、けっこうみんなこれに近いこと平気でやってるから、気をつけてね。
自覚して意図的にやってるならまだいい(いや悪質か)けど、無自覚にやっちゃうんだよね。
追記2
「自覚して意図的にやってるならまだいい(いや悪質か)けど、無自覚にやっちゃう」という一文をお読みでない方が多いようなので、もう一度いいます。
グラフの印象操作は無自覚に起こる場合のほうが多いのです。騙してやろうという積極的なモチベーションがなくても起こります。
また「グラフに数字ふってあったほうがわかりやすい」「数字ふってあったら目盛いらない」と主張される方へ、それは視覚的に比較するのでなく数値比較したほうがわかりやすいということだと思うので、その場合はいっそのこと表にしたほうがいいのでは?
表にしてエクセルのスパークライン入れたらいいと思います。
追記3
しつこくゆーとんのにー You don't know mean?
- 仕事辞めた理由は病気。精神病は考え方とかの問題(だけ)じゃ解決しない。
- 騙す騙さないとかじゃなく、悪意がなくても誤った可視化は起きる。
っていうか悪気がなきゃデータを客観的に見れると思ってるんだとしたら考えが甘いよ。そんなかんたんな話なら「学問」はいらない。
追記4
同情するならなんかくれ。おっと失礼いたしました。ください。
特にお金はあるけど勉強する時間はないというみなさま、難しそうな分厚い本とかいただけたら、代わりに勉強して報告致します。
もしかしたらツールを実装してフリーで公開したりとかもできるかもしれません。
いかがでしょう。ここはひとつ投資だと思って、ご検討ください。